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カシム追悼最終話・いつかの涯に君と逢えたら
水から上がるように、唐突に意識が浮上した。
目を開ける。朝の光が眩しい。
少し、寝過ぎたかもしれない。
「まぶし……」
白い光が目に痛くて、掠れた声で呟くと目元を腕で覆った。
腕の下、瞬きをした拍子に、溜まっていた涙がほろりと落ちた。こめかみを滑り、伝い、枕に染みを作る。
日が昇り、世界は変わらず巡っている。
哀しみに濡れていても、絶望の淵に立っていても、歓びに心躍らせていても、希望を抱いていても。
聖者にも悪人にも、等しく時間は廻る。
残酷なほどに淡々と、けれど美しい世界。
唇だけを動かして、彼の名を呼ぶ。
陽光の向こうで、笑っているような気がしたから。
肩を竦めて、ふっと笑って。
泣き虫、と言っているような。そんな気がした。
喪失の痛みは、簡単に癒えたりしないだろう。
思い出すたびに痛み、寂寥は抜けない刺のように心を刺す。
だけど、それでいいじゃないかと思った。
大切だった。唯一だった。代えのきかないものを失った記憶が、痛みがあっけなく消えるなら、それこそが嘘だろう。
哀しくても淋しくても、いい。
全てを抱えて、前を向く。進んでいく。そう、決めたのだから。
耳のピアスに触れる。
アリババの手元に唯一遺された、それ。
半ば衝動的に身につけてしまったが、今はこうして良かったと穏やかな心地で思えた。
つけたばかりの頃は痛みを訴えていたけれど、今となっては最初からこうしていたかのようにアリババの耳によく馴染んでいた。
忘れないよ。忘れたりしない。
ずっと、一緒だろ?
なあカシム、俺と世界を見に行こうぜ。
そして、いつか。
涯の日に、また逢えたら。
その時は、笑って話がしたいんだ。
お前が飽きてうんざりする程に、沢山のことを。
一つ残らず、話して聞かせるから。
覚悟しとけよ。なあ。
「……カシム」
バーカ、と。
呆れたような声が、聞こえた気がした。
END
幕間などを埋めに埋めてみた7日間。でした。
だってあのピアスは…!! ヤバい…!!
アリババくんと辿る、カシムへの想いみたいな。私的整理整頓話でした。
まあこの後空白の半年を語られそうでドッキドキなんですけど実は!
とにもかくにも、お付き合い頂いた皆様に感謝を。
素敵挿絵を入れ続けてくれた宇崎さんもありがとう! 感謝してもしきれねえ。
後はまたパラレルとかIfとか書くぞー!!
生きてたって いいぢゃ ない。ていう話とかをな!(笑)
…そういや1話が「何度だって呼ぶから」で最終話が「いつかの涯に君と逢えたら」っていう、何だか似たようなタイトルになってるのは偶然です。
狙ってやったわけじゃありませんキッパリ。
計算づくならカッコ良かったのにね! でも何かこういうのも、縁を感じるなーという。
どうやらルフに導かれた模様。