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彼は人の話を聞かない。 無前のひと。4
白龍は自国の神官であるジュダルの事を、あまり快く思ってはいなかった。
時に融通がきかないとまで言われる程に真面目な性格の白龍にとっては、不真面目が服を着て歩いているような態度を取るジュダルが、全くと言っていい程理解出来なかったのだ。
今だってそうだった。白龍がシンドリアに留学と称して滞在しているのは、外交問題が背後にあるからだ。
だがジュダルは違う。
彼は本国での役目があるにも関わらず、国を飛び出しシンドリアへ押しかけ、半ば無理矢理居座ってしまった。
一応は名目上白龍の目付と言う事になっているが、日がな一日ふらふらと遊びまわっているのが常だ。
「聞いているのですか、神官殿」
「あー、聞いてる聞いてる」
嘘をつけ、と。
喉元まで出かかった言葉を、何とか飲み込んだ。
ジュダルは気もそぞろに、何かを探してでもいるかのように窓の外にチラチラと目を向けていた。
思わず溜め息が漏れる。
どうせ自分が何を言ったところで無駄なのだ。元々人の話を聞かない彼が、今更本国からの書状がどうとか告げてみた所で心変わりするとは到底思えない。
だが半ば泣きつくように頼み込んで来た使者を無碍には出来なかった。
だからこそ、白龍はあまり得手とは言えないジュダルをわざわざ訪ねたのだ。
「本国から帰国の要請が出ているそうですよ。迎えも来ておりますし」
「はぁ? なんで俺が言う事聞かなきゃなんねぇワケ?」
「神官の役目とは他国で遊び呆けていることなのですか」
「あったまかてぇなあ白龍は。ジンの一つも手に入れりゃさぁ、ちっとは柔らかくなんじゃねえの?」
にやにやと笑いながら言われ、白龍は思わず自分の表情が険しくなるのを感じた。
相容れない相手に対し説得を試みようと言うのがそもそも間違っているのだ。
一応は言うべきことは言ったのだし、これでいいだろう、と自身を納得させる。
「ともかく、そういう話が来ていることは頭に入れておいてください」
「へーへー。ま、帰る気ねーけど」
面倒そうにひらひらと手を振りつつジュダルが言うのに、やはりなと溜め息がこぼれた。
彼と顔を突き合わせている時は、どうにも溜め息が増える。
良くないとは分かっているし、相手に失礼だとも思うのだけれどどうにも止められないのだ。
ジュダルと話していることによって疲弊している心身が、せめて均衡を保とうとでもしているかのように溜め息が零れる。
相手がそれを気にする様子がないのが、唯一幸いなことだろうか。
使者には申し訳ない気もするが、おそらく本国でもジュダルの答えはある程度予測しているだろう。
「あーあ、だりぃ話聞いたら眠くなった。じゃあなー」
ふわ、と欠伸をして、ジュダルは窓の外に身を躍らせてしまった。
生身の人間なら落ちて無事でいられるような高さではないのだが、相手はマギだ。
窓の外に目を向けると、得意の浮遊魔法を使ってどこかへ飛んでいく様子が見えた。
止める間もなかった。
おそらくはこれ以上この場に居ても説教を食らうだけだと判断したのだろう。
用もないのに押しかけて来たりもするくせに、そういう勘ばかりは鋭いらしい。
部屋に残された白龍は、今日何度目か知れない溜め息を吐くとさて使いにはどう説明したものか、と考え始めるのだった。
END
はからずしも続いている「無前のひと」シリィズ。
どこまで行くのかなこの半パラレルは。
ジュダルちゃんは白龍くんを気に入ってますが、説教はキライです。なのでテンションが低いのです。
あと今は絶賛アリババくんのことが気になっているので、窓の外を通らないかなーと気もそぞろなのです。
結局見つからなかったので飛び出しちゃうわけですが。
さぁどうなる?! …って書くのは自分やんな。