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涙をください。

皇子と王子は可愛いね! …とか、言いつつ。
龍アリというか、まあ龍→アリです、ていうか……
白龍がじりじりしているのがどうやら書きやすいようです。
 

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をください。


「ごめん白龍、ちょっと俺いま、余裕ない」

 だから一人にして、と。
 言い置いたアリババの腕を掴んだことに何より驚いたのは白龍自身だった。
 アリババもまさか引き止められるとは思っていなかったのだろう。涙が滲み始めているその瞳が、驚きに丸くなっている。

「……な、に」
「厭です」

 アリババが言いかけたのを遮り、白龍はきっぱりと拒絶の言葉を口にしていた。
 今までなら、今までの自分なら、こんな行動に出たりしなかった。
 相手の意思を尊重し必要以上に踏み込まず、また自身にも立ち入らせず、当たり障りのない人間関係を築いていただろう。
 だが今は、そうしたくなかった。
 一人になったアリババが、ひそやかに涙を流すのだと、全てを背負って静かに泣くのだろうと思ったら、堪らなくなったのだ。
 この人を一人で泣かせたくない、そう思った。
 それが自分の我儘でしかなくとも、一人にしたくなかった。
 掴まれた腕を振り払おうとしたのだろう、アリババの腕に力が入るのが分かった。だが離す気のない白龍もまた、指の力を強めて。

「白龍、ホントにさ」
「何故ですか」
「……?」
「何故、一人で泣こうとするのですか」

 問いに、掴んだ腕が一瞬固くなり、震えた。
 答えようとしたのかアリババの唇が小さく開く。だが結局、言葉は発せられなかった。
 もどかしげな表情で、アリババが俯く。そんな顔をさせている事が申し訳なく、しかし意思を曲げるつもりは毛頭なかった。

「俺は、理由を聞きたいわけではありません」

 その心に無理矢理踏み入るつもりも、暴くつもりもない。
 傷つけたいわけではなく、ただ。

「貴方が一人で泣くのが、嫌なんです」

 縋りつきたいのが、俺じゃなくても。
 呼びたい名前が、知らない誰かのものであっても。
 その哀しみが、痛みが分け合えないなら、せめて涙の傍にありたかった。
 白龍が折れないと悟ったのか、それとも諦めたのか。アリババの肩から、ふっと力が抜ける。

「意外と物好きだなあ、お前」

 軽口のように言うのは、多分わざとだ。
 冗談にして、嘘にして、この場を取り繕ってしまえれば、と。多分そんな事を考えて。
 俯いていた顔を上げたアリババは白龍に向けてへらりと笑い、だがそこで限界だったのだろう。
 堰を切ったように涙が溢れ、頬を伝い落ちた。
 帳本人がそれに気付かないわけもない。アリババの口があ、と開いて。

「……ごめん」

 吐息のようにささやかな声量で呟いたアリババが、白龍の肩に額を乗せてくる。
 泣き顔を見られたくないのと、縋るものを求めてだろう。
 微かな嗚咽と震える肩を見て、痛々しさと同時に安堵を覚えた。涙を預けてもらえる程度には、彼の心に自分の居場所があるのだと、そう思えたからだ。

 この人の涙を拭えるのも、本当の意味で止められるのも、きっとたった一人なのだ。
 そしてその一人は、おそらくこの世にはもういない。
 アリババの心のどこかは、今もその誰かの許にある。
 そう考えると、胸の奥をぎゅっと鷲掴まれるような気になった。

 悔しいのとも淋しいのとも哀しいのとも違う、切なさにも似た気持ち。
 ……違う。本当は悔しい。彼の心の一部を連れていってしまった誰かがいることが。
 淋しい。その誰かを想って未だに泣いている彼がいることが。
 何より、そんな子供じみた感情を抱いてしまう自分がいることが、哀しい。
 彼の人を構成する何もかもを愛し慈しむことの出来ない狭量さを抱く自分が、否応なく未熟なのだと思い知らされる。

 後悔も哀しみも淋しさも、全て拭い去れたらいいのに。
 けれど自分にはそう出来る程の器はない。それが出来るほどに、アリババの事を知らない。
 何よりアリババの涙は、彼の奥深くに根ざすものから流れていると分かるから、否定は出来ない。
 それがあるからこそ、彼が彼らしくいられるのだろうと思うと、忘れた方がいいなどと容易に言える訳もなく。

 世界が優しければいい。
 この人がこれ以上傷つくことのないように。
 涙を零さずに済むように。
 願いながら、白龍はアリババの髪に少しだけ、気付かれないように注意を払いながら頬を寄せて。
 いつか、彼の涙を拭える日が自分にも来るのだろうか、と考え。
 本当はそれを何より渇望しているくせに、気付かないふりをしている自身に少し笑った。

 今はただ、せめて。
 俺に貴方の。

 ――涙をください。

END


Please call my name.
↑…ってこの話をメモした紙のラストに書いてあった。
アリババくんの涙は最終兵器。
 

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