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サークルHHAAの運営するまったり同人ブログ。
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其は天と地の狭間

捧げものWパロ龍アリ。
元ネタの「空..色.勾.玉」が好きすぎるもんで、書いててすげえ楽しかったです。
とりあえず鳥彦がカシムなのは譲れない。
どんな話題でもカシムをねじ込みたい病かってぐらいカシムカシムだな自分(笑)




其は天と地の狭間


 遠乗りは思っていたよりずっと楽しかった。
 明星は駆けるというよりも滑るように走り、まるで風と一体化してしまうような感覚を抱かせた。それでいて、その蹄が地を蹴る躍動感は溢れんばかりの生命力を感じさせるもので。
 白龍が明星に夢中になるのも納得がいった。アリババ自身は馬に乗ったことは数えるほどしかなかったが、明星が素晴らしい馬だということだけは、充分過ぎるほどに分かった。
 木通を摘み、また走る。
 明星の背があまりに居心地良かったから途中から距離を数えることはやめてしまっていたが、随分と走った事だけは確かだった。
 やがて松虫草が群生している場所に着いた頃には、アリババの胸中には呆れを通り越して感心が広がっていた。

「……いつも、こんなに遠くまで来てたのか?」
「ここはまだ、近い方ですよ」

 表情も変えずにさらりと言われ、驚く。
 だがそれもそうかと思い直した。この短時間乗っただけでも、明星の速さと力強さが分かる程だ。毎日夜明けから陽が落ちるまでを共に過ごす彼らがどこまで行っているかなど推して知るべし、という話だ。

「そっか……今じゃこの辺りは、俺より白龍の方が知ってるんだな」
「俺が興味を引かれたものだけ、ですけどね」
「それでもさ。何か少し、淋しいな」

 ほろりと零れた言葉に、白龍が目を瞬かせるのが見えた。だが、それ以上にアリババも自身の言葉に途惑っていた。
 驚き、けれどややあってからその感情が納まるべき所を見つけたようにすとんと胸の内に落ち着くのが分かる。
 心配しているのだと、思っていた。
 他者と打ち解けるでもなく、ただただ明星とばかり過ごす白龍が、一族の中で浮いた存在になってしまうのではないか、と。それでなくとも白龍の存在は目立つものだから。
 心配し、呆れてもいた。そう感じているのも嘘ではないのだろう。
 けれど紐解いてみれば、抱く感情はひどく単純で分かりやすかった。
 自分のことなど忘れてしまったかのように振る舞う白龍に一抹の寂しさと、少しばかりの苛立ちを感じていたらしい。
 置いていかれるような、そんな気にさえなっていた。そんな事、なかったのに。
 拗ねてたのか、俺。
 分かってしまえば、胸中のもやもやとした感情はひどく簡単なものだった。
 おかしくなって、笑う。

「アリババ殿?」
「でも、今日誘ってくれたのが嬉しかったから、いいや」

 笑いながら告げれば、白龍の表情もまた和らいだ。それが、何故だかとても嬉しいことのように思えた。
 穏やかな秋風が、さやさやと群生する松虫草を揺らす。潮騒にも似た音が、優しく心を撫でていくのが分かった。
 手にしていた木通を割り、かぶりつく。口の中に広がる甘さは、まるで全てのものを赦し包み込んでいくように感じられた。
 地の恵みと天の恵み、両方が在って初めて育まれるもの。
 木通もそうだし、眼前に広がる松虫草もそうだ。
 輝よりも闇よりも、彼らはずっと賢く逞しいのかもしれない。
 どちらが欠けても生きていけない。その姿は、ただ美しく何よりも尊いものであるように思えた。

「……美味しいな」
「そうですね」

 思わず洩れた呟きに、ちゃんと応えがある。傍らに立つ白龍を見れば、アリババと同じように木通を口にしていた。
 口中に残った種を自然な仕草で吐き出す様を見て、小さく笑う。
 宮から連れ出した当初、白龍が何も知らない幼子のようだった事を思い出したのだ。
 あの頃の白龍に木通を渡したら、きっと何の疑いも躊躇もなく種まで飲み込んでしまっていたに違いない。
 白龍は変わった。
 けれどそれは多分、自分にも言えることなのだと思う。
 この地に存在するあまねくものは、ゆっくりと変わっていく。流れていく。
 何人にも留めることの出来ないそれが何より美しいと知り気付いている者は、一体どれ程いるだろう。
 静かに穏やかに、けれど凝ることなく生きていけたら、ただそれだけで充分過ぎるはずなのに。

 終わらない戦の事を考えると、心が沈む。白龍はそんな自分に気付いて、ここに誘ってくれたのだろうか。
 明星を見つめる横顔に視線を向けるが、その真意が分かろうはずもなく。
 少し考えて、そういえば一番言うべき事を告げていなかったのに気付いた。

「白龍」

 呼ぶ。向けられるまっすぐな視線に、そういえばこの瞳に宿る静かな色だけは変わっていないのだと思い至った。
 それを綺麗だと思った自分の心も、あの時と同じように。

「連れて来てくれて、ありがとう」

 この美しい景色を、俺はきっと忘れない。
 そんな予感めいた想いが、アリババの胸中にゆっくりと広がっていた。


END


 

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