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守護者の会議は遅々として進まず
「だーかーら、ねえっつってんだろジジイ!!」
広大な草原のような場所、辺り一面に飛び交う白いルフ鳥、どこからともなく眩い光が辺りを包み込むように照らしている、そこに。
とてつもなく似つかわしくない、そこいらのゴロツキならば聞いただけで裸足で逃げ出しそうな、ドスの利いた声がこだました。
声の発生源は、カシムだ。
それに対するは、アリババのジンであるアモンである。二人は何やら向き合い、否睨み合っている真っ最中だった。
ここは言わずと知れた、アリババを形作るルフの中である。
「ワガママな小僧じゃのう、何が気に食わないんじゃい」
「全っっ部に決まってんだろが!」
「お主がそうやって駄々を捏ねるからホレ、アリババが魔装が進まず困っておるじゃろうが」
「ぐっ……いや待て誤魔化されねえぞ、ジンだか何だか知らねえが、俺を丸め込めるとでも思ってんのか」
「チッ、しぶといのう」
「舌打ちしてんじゃねえよ、聞こえてんぞジジイ」
アリババの根幹に関わりの深い二人は、揉めに揉めていた。
互いに一歩も引かぬ様相のそれは、いっそ黒いルフが現れないのが不思議なほどに険悪な雰囲気を醸し出していた。
二人がこれ程までに譲り合わないと言い合う、その大元の理由とは。
「魔装だか何だか知らねえが、そんっなヒラヒラした露出度の高い恰好をさせてたまるかっつってんだよ!」
「ジンを纏うのはそういうものだと言っておるじゃろ、ワシの責任ではないわい」
「だったらテメーがその恰好やめりゃいいだけの話だろうが」
「ワシのセンスとファッションに文句つけられる筋合いなどないわ、若造が」
アリババが全身魔装を行った際の恰好について、が議題の中心だった。
魔装とはジンを身に纏うことであり、完成した姿はジンそのものに近くなる。
つまりこの場合、アリババがアモンの格好をするものと同義だ。
さて、ここでアモンの格好を思い出してみてほしい。シンプルと言えば聞こえはいいが、布の面積が少ないデザインではある。
勿論そこに多少なり改変が加わるとは言えどう転んでも露出度が多いそれに、アリババの兄貴分兼親友兼崇拝者状態のカシムが首を縦に振る筈はなかった。
曰く、ただでさえ天然系フェロモン放出中のアリババにこれ以上余計な虫候補が増えてたまるか、とのことらしい。
「王にするだか力を与えるだか知らねえけどなあ、そう言うならちったあ考えろっつーの」
「自分が力になれないからの僻みかの」
「……調子乗ってんじゃねえぞジジイ。そもそもテメエ、アリババが黒ルフに侵されてっとき何もしてなかっただろうがよ」
「ワシの力は浄化や回復系ではないんじゃから、仕方なかろう」
「開き直ってんじゃねえよ!」
二人の会話はどこまで行っても平行線を辿っていた。
カシムは今のままでは露出が多すぎるから却下、アモンは自分のセンスに文句を言われるなど心外だ、と。
ちなみにこの口論、纏う本人であるアリババの意思がちらりとも反映されていない事にはどちらも気付いていなかったりする。まあこの会議もどき自体がアリババの与り知らぬ所で為されているものではあるけれど。
「そもそもバルバッドであ奴と揃いの衣装を着ておった奴に言われとうないわい」
「揃……っ」
「やらしい奴じゃのう、それとなーく周囲に牽制しおってからに」
「現在進行形で同じような格好させしようとしてる奴にだけは言われたくねえ!」
本日も会議、まとまらず。
アリババの全身魔装お披露目は、まだ先になりそうだ。
120夜「魔力の質が変化した」の一言から妄想した話。
そんなもん原因カシムだろ。
後はアリババの魔装でもめてるに違いないよね、という話を宇崎さんとよくするので(笑)
カシム追悼話のあとがきでちょろっと書いてた「アリババを通りぬけた時にカシムのルフが残ってたら」がまさかの公式になってしまったのでこんな妄想ですよ。
こんなん書いててあっさり魔装化成功してたら笑えるな。