25日中はまだクリスマス!!
というわけで昨夜テンション上がったので突発的に書いてみたカシアリ。
マギ荘なのかどうかは微妙なのでテキストに置いてみる。同棲してるけどねっ。
色々画像使ってるのでちと重いかも? です。写メなので荒いけどね。

買いたい物があり、アリババと共に訪れた某大型ショッピングモール。
休日ほどではないがそこそこに人で賑わっていて、ああそういえばもうすぐクリスマスなのだと思い至った。
誰か宛てのプレゼントを買ったのだろう、どことなく浮足立った様子の人がそこかしこに見受けられる。
何故唐突にクリスマスが近い事を思い出したのかと言えば理由は至極単純で、飾り立てられたツリーが目に入ったからだ。

ツリー、とは言っても普通にオーナメントで飾られているものではない。いや、一応天辺にある星とそこから下がるリボン、シンプルな星型のオーナメントで装飾されてはいる。
だがそのツリーを目にした時一番に目を引くのは、人の手が届く範囲だけがびっしりと何かで埋め尽くされていることだろう。
近付くにつれ、その何かがベル型に切り抜かれた紙だと分かる。
やや離れた場所には机が設けられ、そこには何かを書いているらしい人々の姿。
見れば書き終えたらしい人はツリーにそのオーナメントを結んでいるようだった。下の方にばかり飾りが集中している理由は、それだったらしい。
「ウィッシュ、ツリー……」
隣りを歩いていたアリババが、ぼそりと口の中で呟いた。下がっている幕か何かを読んだのだろう。
その名称と、人々の動向とを照らし合わせると大体の概要が理解できた。つまり。
「七夕とクリスマスの併せ技みてーなもんか」
「情緒のない事言うなよっ」
べちり、背中を叩かれた。ダウンジャケットを着込んでいたカシムには殆ど衝撃は伝わってこなかったけれど。
ベル型のオーナメントに願いを書き込み、ツリーに吊るす、という企画なのだろう。
クリスマスなんだか七夕なんだか、と思ったのでそのままを口に出したのだが、アリババにはお気に召さなかったらしい。
そういやコイツ変なトコで純粋培養なんだよな、と思いつつ横を見やれば、案の定というか何というか、アリババがあからさまにそわそわした様子を見せていた。
「……荷物持ってっから、行ってくれば」
「ワリっ、よろしく! 行ってくる!」
食材の詰まったビニール袋を渡したアリババは、うきうきとした様子で備え付けられた机に向かって行った。
ガキかよ、と苦笑しつつ通行の妨げにならないように壁際に寄る。片手に気に入っているブランドのショッパー、もう片手にはビニール袋、というなかなかに面白いスタイルになっているな、とどこか他人事のように考えながら。
壁に背を預けアリババの様子を伺う。
オーナメントの種類は複数あるようで、幾つかを手に取り見比べていた。カシムからすればどれも同じに見えるのだが、拘りはまあ人それぞれなので別にどうとも思わない。

暫し悩んでいたアリババだが、やがて決めたらしくペンを手に取ると考える素振りも見せずさらっと書き終えてしまった。どちらかと言えば書く段階でもっと悩むと思っていただけに、少し意外だった。
どうやら何を書くかは決めていたらしい。
書き終えたオーナメントを持ったアリババはツリーの周囲をウロウロしながら下げられる場所を吟味していた。
大勢の人が訪れる場所なだけあって、下げられているオーナメントの数は相当数だ。ぎっしりと、一見すると隙間などないようにベル型のオーナメントが下げられ、揺れている。
困ったようにうろついていたアリババだが、やや置いてから小さく頷き立ち止まった。
軽く腰を折り、腕を精一杯伸ばしている……前に。どうやら、上ではなく奥に下げることにしたようだった。
それとも、余程人に見られたくないような内容を書いたか、だ。
「カシム、お待たせ! もう帰るだろ?」
「ああ……つーかお前、うどん買ったのか」
「あっ、忘れてた……ああー……」
「やっぱりな。〆を忘れるとは流石外さねえなお前」
「言うなよそういう事を! ちょっと俺、買いに戻るから……」
あからさまにがっかりした様子で肩を落としたアリババが、カシムに預けたビニール袋を引き取ろうと手を伸ばしてくる。
だがカシムはその手をひょいと避けた。
空を切った手に、アリババが不思議そうに首を傾げる。おそらくは荷物を引き取り、先に帰っているようにと言うつもりだったのだろう。
少しだけ苛立ちにも似た感情が胸の奥で頭をもたげるのを感じた。
どうせそう大した時間はかからないのだから、どこかで落ち合えばいいだけの話なのに。
同じ場所から出掛けてきて同じ場所に帰るのだから、最後まで付き合うつもりでいた。同性であるからか、アリババは時折カシムが歯痒く思う程にあっさりしていたりする。
「待っててやるから。荷物、ねー方が楽だろ」
「マジで?! 助かるー……じゃあ急いで戻ってくるから!」
「タバコ吸いに行くから、終わったら連絡しろよ」
「うん」
頷いたアリババの背を見送り、カシムはおもむろにツリーに向かった。
目的は勿論、アリババが書いたベルを見つけることだ。
一瞬だが見えた柄と、下げていた大体の場所は分かっていたからそれはすぐに見つかった。
ご丁寧に書いた面を内側に向けていたが、遠慮なくそれをひっくり返す。
「……」
オーナメントに書き込むのは、どうやら願いごとではなかったらしい。
無論願いでも構わないのだろうが、特定の誰かに向けてのメッセージ、という意味合いの方が強いらしく、相手の名前と自分の名前を書き込むようになっていた。
アリババが下げたオーナメントには、名前そのものではなく『to C』『from A』とだけ記されていた。
『ずっとずーっと
一緒にいような!!』
アリババが欠片も迷うことなくメッセージを書いていたのを、カシムは知っている。
少し恥ずかしそうに、けれどどこか真剣な眼差しをしながら。
カシムは裏返したオーナメントをそっと元に戻すと、ふっと苦笑いを零した。
まるで子供のような願いだ。それを、あんな風に真剣に書くなんて。
バカすぎるしガキすぎる。
そう思うのに、同時にどうしようもないほどに嬉しくも感じていた。
ずっと、なんて。
子供の描く夢のような現実味のない言葉を、アリババは躊躇なく使う。叶わないなど、欠片も想像していないような顔で。
永遠なんて生まれてこの方信じたことのないカシムに、笑いながらそれを語る。
語るだけでは飽きたらず、巻き込んで連れて行こうとする。避けようのない嵐のように、有無を言わさず。
先に何が待つかなど自分だって知らないくせに、大丈夫だと笑って。
基本的にカシムとアリババは対等な関係だ。だがカシムが一つ年上であることや互いの性格の差異なども手伝って、どちらかと言えばカシムがアリババを引っ張って行く事が多い。
しかしその実、我儘なのも強引なのもアリババの方なのだと知っているのは、きっとごく一部の人間だけだ。
アリババの魂の根幹に近い場所に踏み込むことを赦された、ほんの一握りだけが知る事実。
そしてカシムは、その真実を知る人間が一人でも少なければいいと、狭量な自身を苦く思いながらも願ってやまない。
お前のことは、俺だけが知っていればそれでいい、とさえ。
少し考えて、カシムは自分もこのイベントに乗ることにした。
より正確に言うなら、アリババからのメッセージに応えを返すことにしたのだ。
適当に選んだオーナメントの裏に、そう悩まずに言葉を記す。下げるのは勿論、アリババのメッセージの隣りだ。
『ずっとずーっと
一緒にいような!!』
『当たり前のこと
聞くなバカ』
星にではなく貴方に願いを
作中では明言してませんが、今夜はすき焼きです。〆はうどんでしょー!
ラブは世界を救うんだぜ!!
てゆからぶいカシアリに飢えている自分…
とにもかくにも、メリークリスマス!!
そしてマギテキスト祝・50本目でした。書いたなあ…
開設当初からお読み頂いている方は、お付き合いありがとうございます。
新規開拓でいらしてくださった方にも、ありがとうございます。
これからも精進してまいりますので、よろしくお願い頂ければ幸いでございます。
補足。
画像のベルですが、黄色と緑のチェック柄をカシムが、下のこれ…何柄っていうのか知らんのですがオレンジのリボンが付いてる方をアリババが選んだことにしてます。
お互いに何となくお互いっぽい色合いを選んでいる、っていう。
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