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水面に沈む言葉の先に

白龍の能力が124夜のバレになってます。バレNGの方はご注意ください。

というわけで診断メーカーが素敵に妄想を煽ってくれたので書いてみた話だよ!
何となく考えたのですが「切っ先に咲く花の色」の続編のような内容になりました。これだけでも読めますが。

詳しい話と本文はつづきから。

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水面にむ言葉の先に


 雨が降っている。アリババはただ、その中を走っていた。
 髪も服も濡れているが、それに気付いてもいないような表情でただ必死に。まるで立ち止まる事を恐れてでもいるかのように。
 身体にまとわりつく衣服が気持ち悪い。何より走りにくい。
 雨で濡れた布が重たい所為も勿論あるが、今アリババが身に纏っているのが着慣れない煌帝国の装束であるというのも理由の一端だろう。アリババが元々着ていた服はどうなったのか、尋ねたけれど白龍は微笑むだけで教えてくれなかった。
 その時見せられた笑顔が、何故かひどく恐ろしく感じられたことをハッキリと覚えている。或いはその悪寒は警鐘、だったのかもしれない。

 
 どうしたら良かったかなんて知らない。分からない。
 ただ、このままではいけないと思った。白龍の為にも、自分自身の為にも。
 いや違う、そんなの言い訳だ。白龍が怖くなった。顔を突き合わせていて尚、何を考えているのか欠片も分からなかった。
 それが怖くて、衝動的に飛び出してきた。白龍のいない隙を見計らって、逃げて来たのだ。
 何が悪かったのか、誰が悪かったのか、どこで間違えたのか、狂ってしまったのか。
 全部全部、分からない。判断が出来ない。
 頭のどこかが痺れていて、上手く思考が回らない。
 ここがどこかも分からないのに後先考えずに逃げ出してくるなど、無計画もいいところだ。
 冷静な部分がそう呟くのが分かるのに、それよりも何よりも今はただ白龍から離れたくてたまらなかった。

 憎んでいるわけでも嫌っているわけでもない。ただ、怖かった。だから離れたいと思った。
 確かに白龍にされたことは、世間一般的にみれば酷いことなのだろう。だがアリババにとってはそれでも白龍は友人であり仲間だった。簡単に切り捨てられも、割り切る事も出来なかった。
 白龍の変化に途惑い、判断に迷ううちにいつしか後戻りの出来ない位置まで来ていた、そんな気がする。

 裸足の足が水たまりに突っ込み、ばしゃりと水飛沫を上げた。泥濘に足が滑り、左腕を下敷きにするような姿勢で地面に転がる。
 ただでさえ雨に濡れていた白い衣服が泥で汚れた。
 けれどそれを気にしている暇はない。擦り傷くらいはあるかもしれないが、咄嗟に受け身を取った為か足を捻ったりはしなかったようだ。
 アリババは身を起こすと、再び走り始めた。 

 ここは一体どこなのだろうか。人の気配が感じられない。
 今の自分の立場が分からない以上、無暗に誰かと鉢合わせする事は避けた方が得策ではある。
 だがそれは逆に言えば助けを求めることも不可能であるという意味だ。
 何としても逃げ切らなければならない。震えそうになる足を、腕を、身体を叱咤しながら走る。

「っ、か、べ……?」

 行き止まりかと思い足を止めた。アリババの目の前には、外壁らしい壁があった。
 高い。何か足場になるものがあれば越えられたかもしれないが、見回す限り代わりになるようなものもない。
 だがこれが外の敷地との境界なのだとすれば、このまま壁伝いに進めばどこかに門があるはずだ。
 門が開いているかは分からないが、このまま突っ立っているわけにもいかない。
 この場所に連れて来られてからまともに鍛錬も運動もしていなかったからか、体力が落ちているのが分かる。
 息が切れ、足が震えていた。だが立ち止まるわけにはいかなかった。
 ともかく今は進まなければ。
 そう思った、瞬間だった。

 何かが風を切る音が鼓膜を穿ち、アリババは咄嗟にその場を飛び退っていた。
 一瞬前まで立っていた場所を腕ほどの太さの木の枝が過ぎって行く。
 それが何であるか、誰の仕業なのかなど考えるまでもない。
 反射的に右手が剣を探す。だがアリババの剣、アモンの宿った金属器は手元にはなかった。
 剣を奪われていなければ、もっと早くにここを逃げ出す決意が出来ていただろうに。
 身体を捻り、右上からの攻撃を避けた。白龍の技は丸腰でやり合うにはきつい。どうするか考えた、その時。

「っあ!」

 思わず悲鳴が口を吐いて出たのは、足元を払われたからだ。
 踵の辺りを無造作に掬われ、一瞬身体が宙に浮く。
 背中から倒れかけたアリババの腕に、足に、胴体にぐるぐると何かが巻きついてきた。そのまま持ち上げられ、爪先がぶらんと宙に浮く。
 倒れることこそ免れたものの、完全に拘束されている体勢だった。
 捕まってしまった事に気付き、唇を噛む。
 どうして、何故、こんな。
 飽きもせず何度も聞いたけれど、白龍は一度として明確な答えをくれたことはなかった。
 今だってきっと、そうなのだろう。

「……白龍」 

 呼ぶ。声が震えている事に気付き、そこでようやくアリババは自分が震えているのだと知った。
 やや離れた位置に立っていた白龍が、ゆっくりとアリババへと歩み寄って来るのが見えた。
 白龍の目はまっすぐにアリババに向けられている。
 すぐ目の前にいるはずなのに、何故だろう。白龍の心が見えない。何を考えているのか分からない。
 それが、この場所に連れて来られてからの常だった。白龍がひどく遠くに感じられて、それが厭で怖くて、何度も話をした。声を荒げたことだってある。
 なのに。

「ご無事でしたか、アリババ殿」

 穏やかな口調で言う白龍の表情は、声音と同様に柔らかい。
 口元に笑みすら浮かんでいる。
 だがアリババには、それがただ怖くて恐ろしくて仕方なかった。
 複雑な出自を辿ってきたアリババは、綺麗なものばかりに囲まれて生きて来たわけでは決してない。
 騙されたこともあるし、汚い仕事を持ち掛けられた事だってある。商売を生業としていれば、笑顔の裏に潜む本音を読み取らなければ生き残ってはいけなかった。
 そんなアリババをもってして尚、白龍の笑顔はひどく恐ろしいものだった。得体の知れない、と言ってもいいかもしれない。
 近付くな、離せ、と。そう口にするのは簡単だ。だがアリババは黙ったままだった。
 口を開くと、みっともない悲鳴が零れそうな気がしていたのだ。

「おかわいそうに、こんなに震えて……」

 白龍の手が、そっと頬に当てられる。触れた瞬間びくりと身体が強張り震えた。白龍がそれに気付いていないわけもなかったが、言及してこなかった。
 何より、心配そうな声音に嘘は感じられなかった。
 白龍は本気でアリババを気遣っている。それなのに何故質問に答えてくれないのか。
 優しい微笑も柔らかな物腰も、全部白龍のもので相違ないのに。
 ここが何処で、何故こんな事をするのか。その問いにだけは、白龍は一度たりとて明確な答えをくれたことはなかった。

「なあ、白龍」
「すぐに湯を用意させますね。暖かい飲み物も」
「白龍、聞けよ」
「さ、帰りましょう」
「白龍っ!!」

 悲鳴のような声で、呼んだ。
 一呼吸分の間を置いて、動きを止めた白龍の顔から表情が抜け落ちる。
 怒りでも哀しみでもない、そこに感情の起伏は見て取れなかった。
 だから、身体を拘束する植物がざわりと動いた瞬間も何をされるのか分からなかった。

「ぁ、う……っ!」 

 どが、という鈍い音が耳に届くのと、背中に強い衝撃を感じるのとがほぼ同時だった。白龍の腕で壁に叩きつけられたのだ、と遅れて気付いた。
 頭は打たなかったものの、息が詰まる。意識は手放さなかったが、視界が暗くなり咳き込んだ。
 巻きついていた植物が離れていくが、足が立たずにそのままずるずると座り込んでしまう。
 背中を丸めて痛みに耐えながら咳き込んでいると、白龍がアリババの前に膝を着くのが分かった。
 咳の所為で滲んだ視界は不明瞭で、気を抜くとそのまま目を伏せてしまいそうだった。意識を保とうと、ふるりと首を振る。

「な、に……」
「この屋敷の存在は、俺に近しいごく一部の人間しか知りません」
「え……」
「最低限の使用人しか勤めておりませんし、彼らにもこちらの棟には近寄らぬように言ってあります」

 平坦な声で、白龍が告げる。 
 声と同様に白龍の顔にはどんな感情も見受けられなかった。怒りも憎しみも憐れみも、何も。
 どうして。
 なんで、そんな顔で、声で、こんな。

「はく、りゅ……なんで、なあお前……どうしちまったんだよ……?」
「俺はどうもしていませんよ」
「そんなわけ……いっ!」

 言葉が途中で切れたのは、白龍がアリババの髪を乱暴な手つきで掴んだからだ。
 そのまま顔を上げさせられ、思わず眉を寄せる。白龍らしからぬ荒れた仕草だった。

「他の奴に笑いかけるなんて許さない、これ以上幻滅させるな」 

 背筋を冷やすような内容の言葉とは裏腹に、その声音は至極穏やかなものだった。
 霞む視界の先で、白龍が笑っているのが見えた。
 背中が痛い。
 何か言わなければ、そう思うのに言葉が出て来ない。
 白龍は自身の行為が正しいのだと疑ってもいないのだ。
 だからアリババにいつも通りに接するし、言動だって今までと変わらない。
 怖いと思ったのは、逃げ出したかったのは。その感情の出所が、狂気にも似た想いだったからなのだ、と。
 気付いてしまった。

 俺は知らない、そんな痛いまでの感情で誰かを想うことを。
 ましてそれを本当に愛と呼ぶのかどうかなんて、分かるわけもない。
 分かるのは、白龍が自分に想いを向けてくれているのだ、ということぐらいだった。

「……白龍」
「どこにも、行かないでください」

 囁くような言葉と共に、抱きしめられた。
 白龍の腕の中は、花のような香りがする。甘すぎない、けれど心のどこかが暖かくなるような、そんな匂いだ。
 置かれた現状を考えれば、この腕を振り払わなければならないのに。
 アリババの腕は、動かなかった。
 物理的に身体が動かせない事だけが、その理由ではなく。 

 言いかけたはずの言葉が、雨の中に溶けて消えていくのが見える気がした。
 抱き締める腕を否定できず、けれど抱きしめ返すこともできず。
 アリババは沈んだ言葉を追いかけるように、目を伏せた。


END


「ご無事でしたかアリババ殿。かわいそうに…こんなに震えてさぁ、帰りましょう他の奴に笑いかけるなんて許さないこれ以上幻滅させるな」 ttp://shindanmaker.com/197260 ごめん普通に違和感ねーなー、な白龍。白アリ好きだよ!!

↑ついったより。
これで…妄想するなと言う方が無理でしょう…私のような妄想過多な生き物に…!!
131夜を読んだ後なので出そうかどうしようか迷った話なのですが、やっちゃえYo★とばかりに書いちゃいました。
自分が病んでいるという自覚がないからこそ怖いっていう話。
こういうのは白龍が本領発揮してくれるだろー、と思ったら予想以上でした…
 

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