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宵闇に浮かぶのは、

アリババ記憶喪失話ジュダアリ、第三段でっす!
楽園は遠く」「所有者は声高らかに宣言す」の続きというか、同じ設定です。
相変わらず記憶のないアリババくんなのでややキャラ改変ぽくもありますのでご注意を!

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宵闇に浮かぶのは、


 それは、バルバッドでアラジンにあの「妙な力」を向けられてから、時折ジュダルの夢を苛む光景だった。
 顔も覚えていない父母。
 集落が、人が、物が、焼かれ壊されていく音、悲鳴。
 その時のジュダルは自我など芽生えているべくもない赤ん坊だ。記憶になど残っているはずがないのに。
 アラジンの使う力は、ルフに刻み込まれた記憶でさえご丁寧に暴いてしまうものらしい。
 思い出したくも知りたくもなかった、過去。
 だって今更真実を知った所で、どうにもならない。
 ジュダルはこれまで通りに退屈を厭い、楽しい事を求めて生きていくという姿勢に変わりはないからだ。
 組織に対する恨みも憤りも、湧き上がってきたりしない。起こってしまった事はもう変えられないし、失われたものは取り戻せないのだと知っているから。
 事実を知ることが、必ずしも状況を変えるとは限らない。

 辟易するのは、思い出せと言わんばかりに夢を視る事だ。
 どうにもならない、どうするつもりもないのに、まるで何かを訴えかけでもしているかのように。
 思い出の一つもないまま死別した父母に対し、何らかの感慨を覚えることなどない。
 それを非情だと謗る者もいるだろうが、言葉を交わした事は愚か顔すら覚えていない父母など他人と何ら変わりなかった。
 少なくとも、ジュダルにとっては他人と同じ認識なのだ。
 だから、ジュダルにしてみれば時折訪れるその夢はただただ鬱陶しいばかりだった。
 どうでもいいのに、いつまでもどこまでも付いて回る。
 言いたい事があるなら言えよ、と投げかけた所で返される言葉があるわけもなく。
 夢から覚めた後は、いつも何とも言えない不快感が纏わりついているような気がしていた。
 苦い物を、無理矢理口の中に押し込まれでもしたかのような。
 口中から消えて尚、その苦みが残っているようで。拭い去れないそれに、苛立ちが募る。

「ジュダル」

 不意に、名前を呼ばれた。
 次いでひらり、闇夜を切り裂くように白い手が伸びてくる。
 腹の底に蟠るもやもやとした感覚を噛み砕くことに意識をやっていたジュダルは、呼ぶ声にも訪れる手にも反応出来なかった。
 意識の端で、ジュダル自身もそうとは認識していなかったけれど、自分に向けられた手のひらに覚えてもいない筈の記憶がちらついていた。
 幼い自分に伸ばされる、幾つもの手。顔の見えない者たち。
 遠く聞こえる、悲鳴と、怒号と。それから。
 動けないままのジュダルに、白い手は欠片の躊躇いも見せずに頬に触れた。
 暖かい指。手のひら。
 冷えた意識に、そっと寄り添うような。

「こっち」

 囁く声と同時、首の後ろにもう片方の手が回される。手は、ジュダルの頭を包み込むように引き寄せ抱え込んだ。
 数瞬遅れて同じ寝台にもう一人寝ていたことを思い出した。
 記憶を失い途方に暮れていた所を、気まぐれに拾ってきた。まるきり動物でも連れて来たのと同じ体で。
 従順な飼い犬のようにジュダルの後を付いて回るようになった、彼の名は。

「……何してんだよ、アリババ」 

 ジュダルに「妙な力」を使ってきた件のマギ、アラジンの選んだ王候補、アリババだった。
 アリババはジュダルを胸元に抱え込んでいるらしく、その表情は伺えなかった。
 無理矢理振り払おうと思えばそう出来るし、何より一言離れろと口にすればアリババは大人しく命に従うだろう。
 けれど、ジュダルはそうしなかった。
 口を開くのも億劫だったというのも理由の一つだが、それよりも。
 ジュダルの頭をぎゅうと抱きしめてくるアリババの腕が、何やら必死の様相を呈していたから、突き放す事を躊躇ったのだ。起き抜けで頭が回っていない所為もあってか、ジュダル本人は自身のそんな感情を理解してはいなかったのだけれど。

「ジュダル、どっか行っちゃいそうだった」

 やや間を置いてから告げられた言葉に、ぱちりと瞬く。
 答えない事をどう思われたのか、抱きつく腕に更に力が込められた。少し、痛い程の力で。

「置いていかれんの、いやだからな」 

 しがみつくように回されている腕が、震えている。
 泣いてはいないようだったが、おそらく泣く寸前なのだろう。声が固い。
 記憶がない所為で精神的に不安定なのか、アリババは一人でいるのを嫌がることが多かった。
 この関係が偽りの元に成り立っているとも知らずに慕ってくる様が面白くて、敢えて自分に依存するように仕向けたりもした。
 結果として、アリババはジュダルの手を享受し、唯一のものとして認識するようになっている。 

 幼子のように抱きついてくる腕は、ジュダルを離すまいと拘束しているようにも、守ろうとしているようにも感じられた。
 右耳が胸元に押し当てられているせいで、アリババの鼓動の音が聞こえていた。
 生きて、ここにいるという証。どこか切なくも響く、音。誰かの心臓の音をこんな風に聞くのは、初めてだった。
 鳴り止まぬ脈動は、ジュダルを包み込むようにも感じられた。
 ジュダルはもそりと腕を動かすと、アリババの背に回した。

「……お前こそ」
「え?」
「お前が、俺を置いていったりしたら、殺してやる」 

 慰めの言葉なんて知らない。
 だから、思い付くままを口にした。
 優しくすることも、労わる方法も、知らないけれど。
 唯一思い至った、それ。裏切りには、制裁を。 

 頭が抱え込まれているせいで、くぐもった声音には迫力なんて欠片もなかった。
 だが、密着しているアリババには伝わった筈だ。ジュダルの言葉が、本気で紡がれていると。
 どう返してくるかな、と大して期待もせずにアリババの言葉を待つジュダルの耳を最初に穿った音、は。
 嬉しそうな、笑い声だった。

「一人になるくらいなら、その方がずっといいよ」

 笑い混じりの声音は、どこか睦言を囁くような響きを伴っていた。
 思わず、返す言葉を失う。
 アリババの言葉にもまた、偽りがないと分かってしまったから。

 死よりも孤独を恐れると、まるで子供のような口調で言い切ったアリババ。
 それは記憶が失われているから出て来たものではないように感じられた。
 手放してしまった記憶の中に、死ぬよりも辛い別離があったとでもいうのだろうか。
 本人に問い質した所で、未だ過去を取り戻す気配もないアリババに思い当たる節があるはずもなく。
 だが知る由もない過去が、何故か面白くなかった。アリババが自分以外の誰かに、何かに心を囚われているのだと思うと、無性に苛立ちが募った。
 だって、だってお前は。

「俺のもんでいるなら、手放さないでおいてやる」
「……俺、何度も言ってんのに。俺はジュダルのだって」
「お前バカだからなあ。繰り返さねーと忘れそうな気がしてよ」
「大事なことは、忘れねーもん」
「……どーだか」 

 トモダチのことも、自分のことも、一度すっ飛ばして来てるくせに、と。
 思ったけれど口にはしなかった。
 ジュダルからすればアリババが記憶を失くしたままの方が、色々と面白いということが事実だからだ。
 拾ってきた当初こそ失くした過去を気にする素振りを見せていたアリババだったが、ここでの生活に慣れた今は覚えていない頃を知りたがることもなくなっていた。 

 無理に思い出さなくていいからここにいろ、と。
 そう告げた時の自分がどんな気持ちだったのか、今でもよく分からない。
 本音も偽りも、ジュダルにとってはどうでもいいことだったからだ。
 ただ面白くなれば、それでいい。
 ジュダルの行動基準はいつだって退屈しないかどうか、しかない。

 この先いつか、アリババの記憶が戻った時。
 ジュダルと過ごした日々を覚えていても、いなくても。
 自分の手元から逃れようとするのは、何となく面白くないと思えた。だから、離れるのなら殺すと告げた。
 どうしてそんな風に考えたのかまでは、よく分からなかったけれど。
 アリババが嬉しそうに頷いたから、それでいいかと思うことにした。
 一つのことをぐだぐだと考え込むのは、好きじゃない。

「俺はジュダルのだから、ジュダルが危なくなったら守るからなっ」
「……何言ってんだか。俺より遥かに弱いくせして」
「うぐっ、こ、これから強くなるし!」
「どっちでもいーけど、眠い」

 くっついているせいで暖かくなったからか、眠気が湧き上がって来た。
 欠伸をしながら言えば、アリババもまた俺もねむい、と返してきて。
 夜明けまでどれ程あるかは分からないが、未だ暗い所から察するにもう一眠りしても大丈夫だろう。
 というか元々気ままな生活を送っているジュダルにとって、規制だの戒律だのは意味を為さないものなのだけれど。縛られるのはゴメンだ。

 ジュダルはアリババの背を抱きしめる腕をそのままに、もう一度眠ることにした。右耳には相変わらず、アリババの鼓動が響いている。
 抱きしめられながら眠るなんて、まるで子供のようだと思う。
 だが振り払えなかった。
 アリババがあまりにも必死の様子でしがみついてくるからだ。
 決してその腕が心地いいから、だけが理由じゃない。
 こいつを拾ったのは俺だし、面倒みるのは仕方ないよな、と。どこか言い訳のように考えながら目を閉じる。 

 暖かい。暗闇の中から伸ばされるのは記憶という名の悪夢でも、見知らぬ誰かの手のひらでもなく。
 縋るように、甘えるように抱きしめてくる、この腕だけでいい。
 行く宛てのない者同士が、熱を分け合うように寄り添って。
 アリババの存在が自分の中で否応なしに大きくなっているのをどこかで自覚しながら、ジュダルはそれに気付かないフリで眠りの波に身を投じた。
 そうするぐらいしか、出来ることはなかった。

 悪夢はきっと見ないだろう。抱き締める腕の暖かさは、きっとそんなものは寄せ付けない。
 けれど。
 悪い夢などよりもっち厄介なものがジュダルを、そしてアリババを包み連れ去ろうとしていた。
 流されるのか、呑み込まれるのか、それとも抗うのか。
 先に待つものが何なのかなど分からないまま、二人はまどろみの淵に沈んでいった。



 

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