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別離の言葉は宵に溶け

お世話になります診断メーカー様。

『紅炎×アリババ』で『夜明け』『さようなら』を使った『シリアス』なお話を書きましょう。

と言われたので妄想してみました。
炎兄好きです…素敵だよあの人…





別離の言葉は宵に溶け


「ここへは、もう来ません」 

 そう告げた時、紅炎の表情はほとんど変わらなかった。ほんのわずかばかり、片眉が上がった程度だ。
 だがアリババには、その微かな変化でさえひどく愛しく感じられた。
 欠片も興味のない事柄ならば、紅炎はそんな反応は見せなかっただろうから。
 そう大きな面積ではないと分かっていながら、紅炎の心に自分の居場所があるのだと。それが分かって、嬉しい。
 同時に、歓びを感じてしまう事がとても申し訳なかった。

「貴方と会えるのは限られた時間でしたけど……俺は、幸せでした」
「……そうか」
「はい」

 紅炎がす、と手を伸ばしてくる。アリババは身じろぎせず、その指を待った。
 最初にアリババの髪に、次に耳に触れた指は、やがてゆっくりと輪郭をなぞるように頬を撫でた。
 煌帝国の第一皇子でありながらも同時に武人である紅炎の指は、決して柔らかくはない。
 だがアリババは、その指が好きだった。
 戦い、自らの力で道を切り拓いてきた手だ。そう思うと胸の奥の方の柔らかい部分が、締め付けられるような暖かくなるような不思議な心地がした。
 けれど、この手に触れられるのも今日が最後だ。
 考えると決心が鈍りそうになる。
 目の奥がつんと痛んで、アリババは慌てて目を伏せた。
 泣いてはいけない。自ら決めて言い出したことなのだから、心が揺らぐような素振りを見せる事すら許されないような気がした。

「なんだ、泣かんのか」
「泣きません、よ」
「それはつまらんな。お前の泣き顔、なかなかに気に入っていたのだが」

 からかうような、意地の悪い言葉に思わず目を開け紅炎を睨んだ。
 無論アリババに睨まれた所で紅炎が怯むはずもなく。
 それどころか楽しげにくっと笑われ、アリババは抗議の意味を込めて紅炎の髪の先を軽く引いた。
 こんな他愛ないやりとりも、もう出来なくなる。それを寂しいと思っている自分に気付いて、アリババは小さく笑った。
 執着を抱く前に別れを告げようと、そう考えていたのに。
 もうとうの昔に手遅れだったのだと、今更思い知らされた。
 アリババが今一度望めば、きっとこの関係は壊れない。今まで通り、頻繁にではなくとも顔を合わせて語らい、触れる時間が持てる。
 だが、自身の心を知ったから尚の事、もうここには来られないと確信していた。
 アリババにとっても、そしておそらくは紅炎にとっても、元々長続きはしない関係だろうという思いは常にどこかしらにあったのだ。
 そして予想通り、今夜終止符が打たれる、それだけの話だ。

「紅炎さん」 

 囁くように名を呼んで、そっと距離を縮める。
 頬に、額に口づけて、一度間を置いてから唇に触れた。
 戯れのような、それでいてどこか神聖な儀式のような。アリババが触れるその間、紅炎は何を言うでもなく。
 終わっていく時間を、この人もどこかで惜しんでくれていたらいいと。
 願うように思った。

「さようなら」

 夜明けまで、もう幾許もない。


END

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