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その心、誰が為に奉ずるか

相も変わらず診断さんから!
貴方にお勧めのCPは『紅覇×アリババ』です。
『クローバー(復讐/シロツメクサ:約束/四つ葉:私のものになって)』をテーマに絵や漫画や小説を作ってみませんか?

って言われたんですよぉ……
まさか覇アリ書くことになるとは夢にも思わなかった。
しかしCP要素ほぼない話になってしまったがまあ想定内ですよね!!!
本誌がどう転がるか分からない(9/10現在)ので捏造設定「アリババが煌帝国側にお呼ばれしました」設定ですよ、と。


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その心、誰が為に奉ずるか

【クローバー/復讐】


 二人だけで話したい事があるんだ、とアリババを呼び出したのは互いにその人となりが分かるような間柄になってから暫く経ってからの事だ。
 紅覇の改まった態度が気になったのだろう。
 理由を告げなかったのにも関わらず、アリババは大人しく紅覇の後ろをついてきた。若干首を傾げてはいたようだったけれど。

「あのさ、アリババ」
「ん?」

 足を止め、向き合う。
 知らず握りしめていた拳の中がじわりと冷えていて、緊張しているのかと他人事のように分析している自分がいた。
 誰かと対峙するのに、それも戦場でも何でもない場所でこんなにも緊張するのは久し振りかもしれない。

「バルバッドの、事なんだけど」

 告げた瞬間、傍から見ていてもハッキリと分かる程にアリババの顔が強張った。
 やはり、彼の地は彼にとって琴線であるらしい。故郷なのだから当然と言えば当然の話か。

「僕が、こんな事言えた義理じゃないのは分かってるけど……でも、言わせて欲しい」
「……聞くよ」
「復讐なら、僕が受ける。だから、炎兄には手を出さないで」

 権謀と策謀の渦巻く宮中で育ってきたのだ。人が腹の裡に何を飼っているかは見た目だけでは計り知れない。
 アリババがそうであるとは思いたくなかったが、伝え聞いたバルバッドの内乱など諸々の件を考えるとそうも言っていられないのが現状だった。
 紅覇の言葉に、アリババは虚を突かれたかのように目を丸くしていたが。
 ややあって、思わずと言った風にふっと噴き出した。

「何笑ってんのさ」
「煌帝国の人って、意外と自虐的っていうか、おかしな方向に義理がたいっていうか」
「……なにそれ」
「会ったばっかの白龍にもさ、同じような事言われたことあるんだぜ」

 おかしそうに笑うアリババにどういう事なのか問う。
 アリババに説明されたのは、白龍がシンドリアに留学という旨で訪れていた時の話だった。
 立場的には兄弟とは言え、義理である上に一緒に育ったというわけでもないのに、同じような事を口にしていたらしい。
 無論その裡に含まれた思惑にはそれぞれ違いがあるのだけれど。

「俺は復讐なんかしないよ」

 アリババは紅覇の目をまっすぐに見ながら、そう言い切った。
 隠し事や含みがあるようには見えない。少なくとも紅覇の見る限りでは、の話になるが。
 いっそどこか清々しいものを感じる笑顔を浮かべているアリババは、おそらく白龍に似たような事を言われた時と同じ表情なのだろうと確信していた。
 あいつは、どう思ったかな。
 白龍を思い浮かべる。
 ここ最近ではどこか思い詰めたような険しい顔ばかりをしている、義弟。
 あいつの事だから、多分。

「俺は、復讐なんか望んでない。そんな事したって、意味ないだろ」

 黙り込んだ紅覇をどう思ったのか、アリババが更に言った。
 復讐に意味がない。
 清廉なようでいてひどく残酷な言葉だ。
 特に、復讐という生き様を人生の糧としている者にとっては。
 アリババに復讐なんかしないと言われ、おそらく白龍は黙り込んだに違いない。
 今の紅覇がそうしているように。

 復讐という行為に意味があるのかないのか、紅覇には分からない。
 だが、アリババの原動力がそれでないというのなら。
 お前は一体何がしたいの、と問いかけようとして、紅覇は口を噤んだ。
 それこそ愚問というものだろう。
 アリババの望みなど、おそらくただ一つだ。
 バルバッドの復興と独立。
 その願いが叶うにしろ叶わないにしろ、きっとアリババは国の為に一生を捧げるつもりなのだろう。

「……まあ、それならさ。ムシャクシャした時の手合わせぐらいなら付き合ってあげるよ」
「えっ、いやいいです」
「ちょっと何それ。何で即答なわけ」
「いや何かどっちかって言うとそれ俺の方がボコられそうっていうか……」
「ふ~ん。アリババが僕の事どう思ってるのか、よーく分かったよ」

 じとりとした目を向ければ、アリババはへらりと笑った。
 誤魔化すような仕草も表情も、凡庸なものにしか見えないのに。
 譲れないものの為に命を賭け、その身を賭す程の熱情がその身の内に宿っているのだと知った。
 知るつもりもなかったのに、知ってしまった。
 アリババの心の行く先は、いつだって彼の国にあるのだ、と。
 或いはこうして対峙している今でさえ、心はここにないのかもしれない。
 それは祖国に身を捧げる敬虔さと評するだけでは、何か足りないようにも感じる程に。
 アリババがどんな道筋を辿って来て今に至るのか。
 紅覇がアリババを「バルバッドの王族」ではなく個人として意識し、興味を持ったのはこの時だった。
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