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しろいとり とんだ
彼は時折、いつもの激昂や不安定さが嘘のように、黙り込むことがある。
それは大概が彼が一人でいる時だ。
だから、彼のそんな一面を、様子を見たことのある人間はほとんどいない。
そうしている時の彼の表情は、どこか無防備で、無垢で、まるで置いて行かれた子供のようなものだった。
「夢を、見た」
ぽつり、呟く。
小さな声で、誰に聞かせるでもなく。
意図して声にしたというより、ほろりと喉から零れたかのような。
「鳥が飛んでいた。小さくて白い、鳥だ。だけど」
夢の中の様子を思い出す。
気付けば暗い暗い場所に一人で立っていた。そんな彼の周りを、小さな小さな白い鳥が、無数に羽ばたいていたのだ。
白い鳥は、泣きたくなる程に美しかった。済んだ声音は、聞いた事もないような美しい音色のようだった。
けれど。
「鳥は、行ってしまった」
触れようと彼が伸ばした指の間をすり抜けて、鳥は遠くへ飛んで行ってしまう。
そうして闇に取り残されて、そこで夢が終わり目が覚めるのだ。
あの鳥は何を揶揄していて、何故何度も同じ夢を見るのだろう。
意味があるものだから、幾度も繰り返しているのだろうに。
その意味が判明したことなど、一度たりとてなかった。
鳥にはまた、会える日がくるだろうか。
いつかその意味が分かる日が、くるだろうか。
考えているうちに、鳥の姿は夜の闇にかき消されてしまった。
いや、それを消したのが本当に夜だったのかどうかは分からない。
ただ、消えてしまった。
それだけの話だ。
END
名称が出てませんが、領主さまです。彼の中には白いルフがすごく少なくてもいたんじゃないか、と思ってやまないので。
つーかジャミルさまもアルサーメンの被害者なんですよね…
壊された子供の心のまま成長してしまったひと、というか。
組織に目をつけられる程度には有能であった、という事だとも思いますし。
……白ジャミルとモルジアナの話が書きたい…(需要は?!)