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!諸注意!
96夜を読んで「魔法」というものを曲解した話。
女体化ではありませんが、妊娠やら結婚という単語が出てきます。
ある意味パラレルというか、ファンタジー? なのでご注意ください。
前提として、
・アリババくんが煌帝国の捕虜
・第一発見者がジュダルだったので所有権を主張し手元に置いている
というのを念頭に置いて頂ければ幸いです。
なんでアリババくんだけが煌帝国にいるのかって、迷宮出た後に飛ばされたとかそういう体です。
アラジンがチーシャンから黄牙へ、という前例もありますし多分距離感はそう問題じゃないよだってマギだし!
という細かいところは心の目で補完してください状態の話ですが、よろしければどうぞ。
あ、言うまでもなくジュダアリです。全開です。
この気持ちに名前があるなら
その言葉を聞かされた時思ったのは、何言ってんのコイツとうとう脳みそ沸いちゃったのか可哀相に、というのが一番最初で。
多分あからさまに信じていないのが顔にも出ていたのだろう、半分くらいはよく分からない(魔法使いとしての知識などないのだから当然と言えば当然なのだが、ジュダルの言葉が要領を得ないものだったというのも十二分にあるだろう)説明を滔々とされた。
分からないながらも、どうやらジュダルがアリババをからかう為だけに言ったのではないと朧げながらに理解は出来て。
血の気が引く音を、聞いたような気がした。
「……うそ、だろ」
「だーかーら、マジだっつってんじゃん! あのなあ、俺ってばマギなんだぜ? ちょっと本気出せば錬金術的なことだって出来んの!」
「だ、って、俺は」
言葉が出て来ない。
子供の頃から様々な出来事に直面してきたアリババだが、これは想像の範疇を超えていた。
恐る恐る、といった体で右手を自身の腹に当てる。
何せジュダルが告げてきた言葉と言えば、何の前触れもなく「お前俺のガキ孕んでっから」だ。普通は信じないだろう。
性質の悪い冗談かと思えば、その後に長々とされた説明はどうにも真実らしく。命令式とやらの細かい展開は残念ながらアリババにはさっぱり理解できなかったのだけれど。
「責任取るって。結婚しよっぜ、結婚」
「……はあ?!」
「ガキがいるとなりゃ、うるせー重鎮どもも黙るしかねーだろ。うん、俺天才」
次から次へと、訳の分からないことを……!
襟首を掴んで揺さぶりながらそう言いたかった。
だが、驚きに竦んでしまったのか身体が動かない。むしろこんな反応を楽しむ為の茶番なのではないかと疑い、そうであれと切実に願った。
アリババは呆然とジュダルの顔を見やるが、いつまで経っても嘘に決まってんじゃん、と言いだす気配はなかった。
右手で押さえたままの腹は薄く、昨日までと何ら変わりのないものなのに。
一晩経つ間にこの身に何が起きたというのだろう。
「そういやお前ってまだシンドリア預かりなんだっけ? バカ殿に連絡した方がいいんかなー」
呑気に見当違いの事を言っているジュダルに、頭が痛くなる。
元々ジュダルのやることは常識外だったが、これはない。
ないだろう、なあ。頼むから冗談だって、言ってくれって。
「何お前、どしたん? あ、おい!」
足に力が入らなくて、がくりと膝をついた。
ジュダルもようやくアリババの異変に気づいたらしく、珍しく慌てたような声で呼びかけてくる。
だがそれに返事をする事は出来ないまま、アリババは意識を手放していた。
願わくば、起きた時にジュダルが引っ掛かってやんの、と爆笑していますように。なんて思考の隅で考えながら。
どれくらい意識を失っていたのか、目覚めた時アリババは寝台の上だった。
一瞬何があったのか分からなくて首を傾げるが、そういえばとんでもない事を言われたんだった、とすぐに思い出した。
いっそ意識と一緒に気絶することになった原因もどこかにすっ飛んでいてくれれば一番いいのだが。
のろのろと上体を起こし部屋を見回すがジュダルの姿はなかった。
相変わらず頭痛は続いていて、アリババは額を手で押さえながらふるりと首を振った。
「あ、起きてる」
扉の開く音、次いで聞こえてきた声に思わず肩が震える。
恐々としているアリババを余所に、ジュダルの様子はまったくもっていつも通りのもので。
ああやっぱりさっきのは冗談だったのか、と考えかけた時だ。
「……まだ、具合悪ぃの」
「え」
「頭、押さえてるし」
思いもかけず気遣われ、アリババは瞠目していた。ジュダルは少し気まずげな顔で、寝台の端に腰を下ろす。
まさかジュダルに体調を心配される日が来るなんて予想だにしていなくて、返事をするのも忘れてぽかんとしてしまう。
呆然としているアリババに、ジュダルはすいと手を伸ばして。
「ババァにさ、怒られた。妊娠初期って不安定になるもんなんだから、ちゃんと気ぃ遣えって」
ゆるゆると髪を梳きながら、告げられる。
いやお前のその言葉がもう死刑宣告みたいなもんなんですけど、とは口からは出て来なかった。
妊娠の件は、冗談でも謀りでもないらしい。
頭痛がする。
「えっ、ど、どうしたんだよ? やっぱどっか痛いんだろ。何か持ってきてもらうか?」
「っう、ちが、う、ばか!」
目の奥が熱くなったと同時に、涙が溢れた。止める間なんてなく、ぼろぼろと頬を濡らす。
相当怒られたのか、ジュダルが普段なら絶対に見せない気遣いを見せてくるのが、余計に自分の置かれた状況を示唆しているようで。
しゃくり上げながら、アリババは握った拳でジュダルの肩をどん、と押していた。震える腕ではちっとも力なんて入らなくて、突き飛ばすどころか押しのけることすら儘ならなかった。
悔しい。
元々アリババは捕虜としてジュダルの所有物であり玩具のような扱いを受けてはいたけれど。
共にいる時間が長くなるにつれ、僅かずつでも、微々たるものでも、段々とジュダルとの距離が縮まっているような気がしていたのに。
自分の意思など欠片もないままに身体を弄られた。それを、裏切られたと思ったことが悔しい。
悔しくて哀しい。
何より、今は。
「ふ、く……っんで、なんで、なんでだよ、なんでっ」
「落ち着けよ」
「落ち着いてなんて、られるか! 俺が、俺は……ううーっ」
ジュダルに落ち着けなんて諭される日がくるなんて。屈辱的で、思わず怒鳴り唸る。
握った拳で、些か乱暴に目元を拭う。それでも涙は止まらなくて、ぐすりと鼻を啜った。
混乱し感情的になっているのはどこか冷静な部分で分かっていた。だが、それでも止められない。
ぐるぐると渦巻く不安が、心を呑み込んでいるようだった。
悔しくて、哀しくて、それより何より、ただ、怖かった。
作り変えられた身体が、新たな命が宿っているだなんて事実が、怖くてたまらなかった。
魔法の中には、人や物の構造そのものを変えてしまうものも存在しているのは知っている。実際に過去訪れた迷宮「ザガン」でそういう光景を目にしたことだってある。
だが知識や事実として知っているのと、自身の身に降りかかるのとでは大分違う。
まるで、自分が人の枠からはみ出してしまったかのような。戻れない場所に立たされているような、そんな気がした。
それがただただ、怖くてたまらなかった。
「お前んこと、俺のもんにしたかったから」
ぽつり、独り言のようにジュダルが言ったのは、やや間を置いてからだ。
何を言い出したんだ今度は、と途惑い、それが先程アリババが訊いたなんで、という言葉に対する答えなのだと知る。
だが、そんなの今更だろうに。
捕虜という立場のアリババは、ジュダルに隷属しているも同然の扱いを受けてきた。
何故今更所有することに拘るのか、理解できない。
当惑するアリババの拳を、ジュダルは外側から包むかのように握って。
らしくなく柔らかな触れ方と、告げられた言葉とを反芻して、ふっと。まるで天啓のように行き着いた考えを、アリババはほろりと唇に上らせていた。
「……それって、お前、俺のこと、好きなの?」
呆然と口にした言葉は、いざ音にすると何だか間の抜けた響きだった。だがそれ以外に思い浮かぶ言葉もなく。
自分の傍に繋ぎ止める理由が、それも逃げられないほどに明確で分かりやすい要因が必要だと思うほどに。
多分、好きだなんて甘ったるい言葉では足りないほどに、執着をして、いるのだと。
「好きとか、よく分かんねーけど。お前んこと、手放したくない。そんだけ」
どこか不貞腐れたような口調のジュダルだが、それでもアリババの手を掴む指は優しく暖かかった。
気付く。
ジュダルはきっと、知らないことばかりなのだ、と。魔法の命令式だとか、多分そういう知識面では人より多くを持っているのかもしれない。
だが、多分生きていくのに必要で大切なことをほとんど知らないのだ。誰も、教えなかったのだ。
握られたままの手を見下ろす。
包み込まれるようなのに、どこか縋りつくようでもあった。
ジュダルの執着が生半可なものではない事は、妊娠などという強硬手段を取られたから痛い程に分かる。
何を言ってもしても、きっと自分を諦めてくれるつもりなどない事も。
それなら、俺は。
お前と、向き合うよ。
俺からお前へ向いてる気持ちとも、ちゃんと。
だから。
「お前が……好きってこと、ちゃんと分かったら……っ、け、結婚、しても、いい」
うん、多分。
絆されたんだろうきっと。
今までの傾向と対策からこのサイトをご覧の皆さまにはもうお分かりかと存じますが。
金沢は割と破天荒なパロとかネタが好きであります。
ちっさいきっかけでも無理矢理押し広げてネタにするのとか、もうマイナー畑で生きてきた人間ならではの技が身についているものでして。
と、いうわけで男のコのままで妊娠ネタ、というジュダアリでしたーい。
宇崎さんがネタフリしてくれて、かつザガン先生が魔法の可能性を示唆してくれたから出来たネタ。
あととりあえずジュダアリは需要と供給のバランスが取れていないんだぜ。
もっと皆…欲望に素直になっていいんだぜ…?!(訳・人様のジュダアリもっと見たい)