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「立ち入れない。」

宇崎さんがインテで頑張ってくれているようなので、エア新刊とばかりに更新してみることにしました。

105夜ネタばれがさらっとあります
カシム生存IF
・カシアリ←白龍(無自覚)

私の脳内であんまりカシムが存在を主張するのでもういっそ生きてたらいいじゃない、というノリです。
あまり細かい事は気にせずに読める方向け。
私…カシアリが幸せならそれでいいんです…!!

というカンジなので、大丈夫な方だけどぞー。

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「立ち入れない。」


 迷宮ザガンから帰還した祝いにと催された宴の最中だった。
 白龍はふと、アリババの姿が見当たらない事に気付いた。
 祝宴、とは言ってもごくささやかなもので参加者もそう多くはない。
 見回しても姿はなく、しかしアリババの性格上何も言わずこの場を辞したとも考えにくかった。
 勿論前後不覚に酔っていなければ、の話ではあるが。だが飲み始めの頃を思い返してみても、潰れるような無理をするペースでは飲んでいなかったはずだ。
 ならば酔いを醒ましにか、誰かと話すためにか、どちらかの理由で席を外したと考えるのが妥当だろう。
 探しに行く気になったのは、何となくだ。
 ジンに選ばれた際の話をあまり積極的にしたくなかったというのも、理由の一つではあったけれど。

 庭園に面した扉から外に出る。
 たったそれだけの事で随分と静かになったのを感じ、やはり思った以上に気を張っていたのだと気付かされた。
 潮の香りがする風が吹きつけてくるのが心地いい。
 回廊に設えてある手すりに腕を掛け、ふっと息を吐いた。自身で思っていたよりも随分と酔いが回っていたらしい。
 宴とは言っても、ごく身内での食事会に近いものだ。
 多少自分が席を外した所で問題はないだろう。特に今は酒も行き渡り、無礼講の様相を呈してきているようであるし。

 話し声に気付いたのは、その時だ。
 風向きが変わったから聞こえてきたのだろう声に、なんとなく耳を傾ける。
 白龍が今いる場所からやや離れた場所で、誰かが話しているらしい。
 声は建物の陰、ちょうど白龍の位置からは死角になる場所から聞こえてきていた。

「その時アラジンがさ」

 声が紡いだ名に、瞬く。すぐにはその声の主が分からなかったからだ。
 動きを止め、声に耳を澄ます。
 楽しそうに話す声は、よくよく聞けば確かにアリババのものだった。間違えようもない筈なのに、何故誰だか分からなかったのか。
 知らない誰かの声だと思ってしまった自分に途惑い、何よりアリババに申し訳なく思う。
 よく知らない相手ならともかく、シンドリアにやって来てからは一番親交の深い相手だ。その声に気付けないなんて、と多少なりとも落ち込んでしまう。

 アリババの話し相手はあまり饒舌な性質ではないらしい。
 言葉の合間合間に頷く声はするのだが、それも一言二言程度で声から誰かを判断することは出来なかった。
 一瞬彼の師と話してでもいるのかと思ったが、それにしてはアリババの口調が随分と砕けている。それにシャルルカンが宴の席で飲んでいる姿は、ここに来る前に目視していた。
 師ではない、そして話の内容からアラジンでもモルジアナでもない。
 彼が誰と話しているのか、気になった。
 会話を邪魔する気はない、ただ確認するだけだ、と誰に指摘されたわけでも見られているわけでもないのに胸中で呟く。
 それがどことなく言い訳めいている事に気付かないまま、白龍はそろりと声のする方へ向けて足を踏み出した。

「だっ、そ、れは……お前ホンット、そういうとこ意地悪ぃのな!」

 相手の言葉に、アリババが悔しげに唸った。続いた言葉は、拗ねたような口調で。
 聞きながら、すぐにアリババだと気付けなかった理由に思い至った。その声音が今までに聞いたことのない響きで紡がれているものだったから、だ。
 拗ねて、怒って、それから楽しそうに笑う。常よりもどこか幼く聞こえる声が、おそらくはアリババの素に近いものなのだろう。

 俺には向けられたことのない、声が。
 考えて、腹の奥が冷えるような心地に陥った。
 何故そんな風に感じるのか自身でも首を傾げかけたその時、アリババの背を視界に捉えた。
 回廊の端に置かれた長椅子に腰掛け、隣りに座る相手と話している。
 アリババと話しているのは、白龍の知らない男だった。年の頃はアリババより幾らか上だろうか。
 こちらに背を向けて座っているアリババの表情は見えないが、伝わって来る雰囲気だけでも彼がひどくリラックスしているのが分かる。
 対する相手もまた、穏やかな表情をアリババに向けていた。

 白龍の肩がぴくりと揺れたのは。アリババの耳に光るピアスと、男がしているものとが同じ物だと気付いたからだった。
 アリババは右耳に碧、左耳に紅いものを、対する男は逆に右耳に紅、左耳に碧を下げている。
 それが片方ずつを交換した物だろう事は一目瞭然だった。

「つーかお前、戻った方がいいんじゃねえの」
「あ、と……そうだな、黙って出てきちまったし」
「まあこれくらいの時間なら、酔い醒ましって言えるだろ」
「醒ます程飲んでないけどな」

 軽口を叩きながら、アリババが立ち上がる。
 だが傍らの男は動こうとせずに、それを見たアリババが逡巡するのが分かった。

「……待っててくれたら、部屋まで送ってくけど」
「気ぃ遣ってんじゃねーよ。生意気」

 アリババの申し出を両断した男は、けれどどこか楽しげに笑いながら手を伸ばし。アリババの腕を掴んで、引いた。
 引かれる力に逆らうことなく腰を折ったアリババは、ごく自然な動作で男と唇を重ねた。
 掠めるように触れたそれが一度離れ、二人は至近距離で視線を交わす。体勢が変わったからか、アリババの横顔が窺えるようになっていた。
 男が微かに笑って何かを囁き、アリババは瞠目し。だが次の瞬間に泣き出しそうな表情になって、応えるように唇を動かした。
 何を言ったのかは、分からない。白龍の位置までは届かない、おそらくは互いにだけ聞こえるように紡がれた言葉。
 ただ、それがアリババの根幹を揺さぶるような言葉だったのだろうという事だけは分かった。
 アリババの頬に手を当て、男が何か言う。
 その仕草が、表情が、眼差しが、物理的な距離だけではなく、ひどく近しいものに見えた。

 白龍は音を立てないように気を付けながら後退ると、その場を離れた。
 あれは、誰だったのだろう。
 順当に考えれば、唇を重ねていたのだから恋仲の相手になるのだろうけれど。何となく、単純にその言葉だけでは片付けられないような気がしていた。
 恋情だけではない、もっと広く大きな愛にも似た、情。
 ただ寄り添い合うことで生きている、そんな風にも見えた。
 情だけではなく、心の奥深くで混じり合っているかのように。
 触れあう指に、重なる眼差しに宿る愛しさは、見ている方の胸を突くようだった。

 何かを振り切るように早足で歩きながら、白龍は自身の脈が不自然に乱れているのを感じていた。
 想定外の場面に出くわしてしまい動揺しているのだろうと、服の胸元を握りしめながら落ち着けと言い聞かせる。
 なのに、意思に反して鼓動はなかなか元に戻ろうとしなかった。
 何故か、アリババの泣き出しそうな表情が目の前をちらつく。そして思い返す度に心臓が軋むように音を立てるのだ。
 あの人の涙は、どうしてか苦手だ。見たくないと、そう思う。
 泣かないでくださいと、そう言いたいのに。けれど今彼の涙を拭うのは自分ではない、他の誰かで。

 アリババの隣りに座っていたのが誰かも分からないのに、白龍は本能的に悟っていた。
 あの二人の間には、何人たりとも立ち入れない何かがある、と。
 それが一体何で、何故こんな風に感じるのか、その理由までは分からないけれど。
 全力疾走した後のような鼓動は、今しばらく落ち着きそうになかった。



カシム生存IF、105夜読了後MIX!
てわけで。
カシムが生きてたらカシアリ以外のカプの成立確率が0%の気しかしない…! という話になりました。
あ れ …? (誤算だったらしい)
てゆかカシムの行動は牽制だと思いますせんせい。そして白龍の無自覚片想いが好物であるらしい私。
ちなみにこれ、元タイトルは「太刀打ち出来ない。」だったっていう。
あまりに身も蓋もないので現行タイトルに(笑)
がんばれ若人。
 

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