貴方にお勧めのCPは『紅炎×アリババ』です。『アスパラガス(何も変わらない/私が勝つ/敵を除く/耐える恋)』をテーマに絵や漫画や小説を作ってみませんか?
っていう診断メーカーが出て萌えたので書いてみた、炎アリ。
本誌がどう転ぶか分らないうちに出しとけ出しとけー。って勢いのみ。

No LOST
「……知ってるよ。俺が動こうが動くまいが、何も変わらないって」
アリババは笑いながら、そう言った。
バルバッドを再興してどうするつもりだ、と紅炎が尋ねた言葉への返答だ。
「言葉遊びの類をするつもりはないのだがな」
「俺だってそんな事してるつもりじゃない。俺はあの国の王にはならないって言ってるだけだ」
「……理解不能だな」
国の再興を目指すからには、自身が舵取りをするつもりなのだろうと思っていた。
初対面の際には何とも頼りない弱輩者だと思ったものだが、その人となりを知るにつれ未熟ながらマギにもジンにも選ばれるだけはあると評価していた。
研鑽を積めば或いは自分に並び立つ事も可能なのではないか、と。
「国を束ねるのは王かもしれないけど、国を作るのは人だ。俺は、束ねるんじゃなくて国を作る人たちを支えたい」
「それを、上に立つと言うんだろう」
導き手は必要だ。
人にも、国にも、そして時代にも。
力がある者はその立場を背負うべきだと常々思っているし、自身も受け容れているつもりだった。
だからこそ、アリババの言葉に引っ掛かりを覚える。
アリババは逃げているわけではないのだろう。けれど、紅炎の見据えている物とは違う何かを見ている。
失った国への強い執着とは裏腹に、紅炎と向き合うアリババの表情は至極穏やかだった。
「違うって。俺は勝ちたいわけじゃなくて、守りたいってだけだ」
「勝たなければ守れないだろう」
「滅ぼす事と外敵を遠ざけることは違うだろ?」
「……甘い考えだな」
遺恨は断たねば、後のどれほどの災いとなって戻り来るか分からない。
溜め息を吐き、だがそもそもが新興国である煌帝国と二十三代続いたバルバッドとでは考え方に差異があるのも仕方ないと言えるのだと思い至った。
紅炎の渋い顔を目の前にして、アリババはふっと笑った。
「理想を語れなきゃ、人は死んじまうだろう?」
清々しいような、年よりも幼いような、笑顔だった。
裏腹に達観しているようにも老成しているようにも見える。
常に見せているような人との距離感を絶妙に測る笑顔とは違うそれに、アリババにとってのバルバッドが唯一なのだと知らされた気がした。
郷愁、ともまた違うような気がする。
そうだ、あれは、あの表情はまるで。
「叶わぬ恋でもしているようだな、祖国に」
告げた言葉に、否定の言は返されなかった。
その胸中にあるものが、見据えている先に在るのが、一体何か。
おそらく暴くだけでは触れられない、知り得ないものなのだろう、と。
何となくそう感じた。
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