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サークルHHAAの運営するまったり同人ブログ。
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白亜の標は彼の人がため

相も変わらずお世話になります診断メーカー様。如何お過ごしでしょうか。
私は投下されるお題に妄想を煽られ日々楽しいです。
というわけで、

『マスルール×アリババ』で『花束』『夢のまた夢』を使った『シリアス』なお話を書きましょう。

というお題から妄想したらあれよあれよと出来あがった話です。
未来捏造なのでご注意くださいませ。





白亜の標は彼の人がた


 彼の住まいは、島の全景を見下ろせる高台にあった。
 港から見上げると、木々の緑に囲まれて白い小さな小屋があるのが分かる。それは何かの、誰かの道標のようにも見えた。
 ゆっくりと歩きながら、島の様子を観察する。
 僅かながら外部との交流はあるものの、特産品があるわけでも観光名所があるわけでもない島に訪れる人間はごく少数のようで。
 島の住人たちは殆どが自給自足の慎ましやかな生活を送っているようだった。
 世界を揺るがす程の騒動の渦中、それもその中心にいた彼が選ぶには随分と小さな島だ。
 だが行き交う人々の穏やかな表情を目にして、何となく納得がいく。
 彼が、アリババが何より尊び優先したものは、人々の笑顔だったから。

 一連の件に決着が訪れ、世界の情勢が落ち着きを見せると、アリババはどこに腰を落ち着けるでもなく旅に出ると決めてしまった。
 彼を歓迎する国も人も多くいたのだけれど、ゆっくりと世界を見て回りたいのだと笑顔で言われては誰も強く出る事は出来ずに。
 縁があればまたいずれ、と。
 そう告げて手を振り去って行ったアリババを追うだけの覚悟と決心がついたのは、実に半年が過ぎてからだ。
 シンドリアを出るまでの諸々の準備に半年、更にアリババの行方を掴み、特定しこの島に訪れるまでがおよそ一年。
 アリババと別れてから、気付けば二年の歳月が流れようとしていた。

 正直な所、アリババに歓迎されるかどうかは分からない。
 アリババは彼を慕う周囲の誰をも選ばず、たった一人で旅路に着いた。
 それはつまり、一人になりたいという確固たる意志の現れだったのだろうから。
 本当は顔を見せない方がいいのかもしれない。息災でいるのかだけを密かに確認し、満足するべきなのかもしれない。
 しかしその考えは、アリババが住む小屋の前に立った時に完全に拭い去られた。

 一人住まいだからだろう、小屋は必要最低限の大きさでしかなく。
 やや離れた所には小さな畑が作られていて、アリババがこの島の住人達と同じように自給自足の生活を送っている事を物語っていた。
 だがマスルールが何より驚き息を呑んだのは、小屋の周囲を取り巻くように数々の花が咲き誇っている光景にだった。
 島に自生する植物が、アリババの住む場所を護るように彩るように咲き乱れている。
 種類も色も多様なその花々は、アリババが植えたのか元からあったものかは分からない。
 清廉にも無機質にも見える小屋の白い壁と相俟ってそれは酷く美しかった。まるで一枚の絵画のように。
 綺麗過ぎて、どこか現実味がない。
 滅多な事では感情の動かないマスルールだったが、この時ばかりは背筋が寒くなるのが分かった。
 爛漫に咲く花たちは沢山の花束を置いてあるようにも見え。花束に囲まれる小さな白い小屋が、まるで墓標のようにも感じられたからだ。
 アリババは何を思って、ここに一人きりで住んでいるのだろうか。

「あれ……どなたですか」

 マスルールがつい今し方歩いてきた後方から、声がかけられる。
 足音には気付いていたから、驚きはなかった。
 マスルールが立っているのは木陰だったから、誰かまでの判別はつかなかったのだろう。
 かけられた声に不審そうな響きはなく、ただ疑問ばかりが浮かんでいた。ここを訪れる人間は滅多にいないらしい。
 拒否される事も覚悟しながら、ゆっくりと振り向く。首だけではなく、体ごと。

「え……あれ、マスルール、さん? え?」

 籠を小脇に抱えたアリババは、二年前に別れた時とそう見た目は変わっていなかった。
 声も、くるくると変わる表情も、マスルールが好ましく思ったままだ。
 唯一違うとすれば、髪が伸びている事ぐらいだった。それも伸ばしているというよりかは、切る機会を逸しているうちに長くなってしまった、という具合で。
 伸びた襟足を簡素な紐で括っているアリババは、突如として現れたマスルールを前にただ混乱しているようだった。
 何事か言いたげに唇が何度か開閉した後、額を押さえてふるりと首を振る。

「色々、言いたいことも聞きたい事もありますけど……それは、マスルールさんもだと思うんで」

 目を伏せながらそこまで言った後、アリババは額を抑えていた手を外して顔を上げた。
 マスルールが気に入っていた、明るい日差しのような色をした目がまっすぐに向けられる。
 つい一瞬前までは困惑が浮かんでいた眼差しには、今は確かに喜びの色が乗っていた。

「広くはないですけど、中で話しませんか。お茶くらいなら出せますよ」

 アリババの目が細められる。
 マスルールが何より好いていた笑顔が、再会して初めて零れた。
 笑った顔を見る事が出来てようやく、アリババに拒絶されなかったのだと確信出来た。
 安堵と共に喜びが込み上げてくる。会えて良かった、行方を探し追ってきて良かった、と。
 ようやくそう思えたマスルールは、数歩分の距離を瞬く間に詰め。
 腕の中に閉じ込めるかのように、アリババの背をかき抱いていた。


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