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カシム追悼閑話・「 」
あーあー。まぁだ、泣くのかよ。
知ってっけどさ。お前泣き虫だって。ガキん時から、変わんねーのな。
目ぇ溶けちまうぞー、アリババー。
……いいよ、連れてけよ。
そうだな、俺は結局、お前に何もやれなかったしな。
そんなもんで良けりゃ、お前にやるよ。
なあ、でもさ。わざわざ持ってかなくたって、俺はお前のそばに在るんだぜ?
あ、おい、まだ泣くか。
目、腫れんぞ。
……聞こえてねえよな、まあ。
別にいいけどさ、お前が何考えてようと、悩んでようと。
お前の痛みはお前のもんだし。
……でもなあ、とりあえず寝ろよ。
昨日もほとんど寝てなかったじゃねえか。目の下の隈、他の奴らに見せて歩いてどうすんだ。
段々ひどくなってんじゃねえかよ。
……まあ、仕方ねーか。
全部背負い込んでんだろ、また。
そういう奴だもんな、お前。
お前がそういう風だったから、俺は。
何、そんなに気に入ってんのか、それ。
お前のと変わんねーだろ。
あー……ああ、泣いた。
痛そうな顔して泣くなあ、お前。
そんなに悲しいのかよ。……悲しい、んだよな。
……は? お前、どこ行くっつか、何する気だよ。
おい、こら、バレてんだぞ、何考えてっか。
待てって。そりゃあ持ってけっつったけど、そんな事させる為に言ったんじゃねえぞ。
いやまあお前が何をどうしようと、自由だけどよ。
でもそれは流石に、俺も責任感じるっつーか……
あ、おい!
あーあー……痛ぇだろ。
二つ続けていくとか、お前はよぉ……
昔っから、変なとこで度胸あるよな、相変わらず。
あーそうだよ。バカだと思ってるよ。
笑ってはいねーけどな。笑えるか!
なあ、アリババ。
忘れてもいいんだ。忘れるから生きていけるってことも、ある。
全部抱えようとなんて、しなくていい。
苦くて辛いもんを、何でわざわざ抱えていこうとするんだよ。
忘れられたって、俺はお前を恨んだり情けなく思ったりしねえのに。
痛い?
痛いだろうな、そりゃ。
なあ、全部抱えこんでりゃ、痛いだろ。
……呆れてるよ、決まってる。
何より、俺自身にだ。
その色も似合うんじゃねーの、なんて。悔しいから、絶対言わねーからな。
ああ、お前ら元気そうだな。
すっきりした顔しやがって、ったく。
コイツにも分けてやれよ。まだ泣くんだぜ、アリババの奴。
ははっ、なに驚いてんだか。
なあアリババ、お前、こいつらに怒られるとでも、責められるとでも思ってたのかよ?
そうされたら、この土地に残れたかもしれないって?
お前のこと、お前の為した事を知ってて、怒るわけねーに決まってんだろ。
気付いてなかったのかよ。コイツら、何だかんだでお前ん事弟みてーに思ってんだぜ。
弟っつーか、末っ子か?
お前が、あの日、あの時。シンドバッド相手に兄弟だって啖呵切った時に、どれだけそれを嬉しく思ってたか。
……って、てめえええ!! それ、言うなっつっただろうが!!
お前も聞いてたんなら止めろ! くっそ……!!
あん時は、何かスゲェいいかんじに酒が入ってて、つい口が滑ったんだよな……
あ? ……ああ、またか。
ホントによく泣くなあ、お前。
そうだよ、俺は笑ってたろ。
なのにいつまでもいつまでも……悲しむなとは、言わねーけどさ。
あんまり泣かれっと、何か悪い事した気になるじゃねえか……
あん? いるよ、悪いかよ。つーか笑ってねえし。
俺の持ち物の所為で穴開けっとか、マジでおばさんに立つ瀬ねーっつうの。
……生きてたら責任取れとか言って笑われてそうだな……
まだ見てんのか?
流石にもう見えねえだろ、こんだけ離れりゃ。
つーかまたぐだぐだ考えてんのか。
ったく、信じるって決めたんじゃーのか、よ!
そうだよ、決めたんだろ?
迷っても悲しんでも、別にいいけどよ。
なあ、あんな顔すんなよ。
何の色もないみたいな、あんな顔をお前がするなよ。
混乱してんのも、焦ってんのも苛立ってんのも、いいから。
全部出しても、お前はお前だろ。
お前の傍にいる奴らは、そんぐらいじゃ離れていかねえよ。
……ああ、そうだな。
眩しいかも、しんねーな。
……なんだよ、落ち着いたと思ってたんだけどな。
夢ん中に泣き場所求める程、余裕なかったのか?
最近は忙しそうだったから大丈夫なのかと思ってたんだが……まあ、仕方ねーか。
「……泣き虫」
END
カシムの視点で。
見守ってるよ、という。
アリババを通り抜けた時に、カシムのルフが一片でも残っていたらなあ、と。
この後夢の中での再会に繋がるわけです。
タイトルの「 」内は、どうぞお好きな言葉で。