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眠りの淵、告げる言葉は穏やかに

カシアリをうたっているので、それっぽい話をさくっと出さないと!
とひねり出しました。
霧の団でこんな日があればいいと思うよ。
カシアリです。と言い切る。

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眠りの淵、告げる言葉は穏やかに



 霧の団は確かに盗賊……いや、義賊を名乗ってはいるが、毎日毎夜行為に及んでいるかと言われれば、勿論そんなことはない。
 切迫したスラムの状況から、確かに襲撃の回数は多いかもしれないが、それも宵闇に紛れる時間だけだ。
 つまり、昼間は至って普通に生活をしているだけなのである。
 ここ最近俄かに団員数を増やし勢力を拡大しつつある霧の団だが、基本的にカシムの周辺にいるのは結成時から苦楽を共にした者たちであることが多い。
 何を言いたいのかと言えば、カシムの周辺は何もなければまったりしている事が殆どだ、という事だ。
 いつもいつも殺気立ってばかりなどいられないし、元々が人間らしい尊厳を持ってある程度の生活をスラムの皆が過ごせるように、という名目で結成されたのが霧の団だ。だから平和であることは、ある意味一番の目標であり贅沢でもあるのだろう。
 だが、しかし。
 カシムは目の前の光景を敢えて無表情で見つめながら、これはどうなんだ、と自問せずにはいられなかった。

「何がどうなってこうなったんだ……」

 呟く。
 カシムの視線の先では、霧の団の頭領であるはずのアリババが、日当たりのいい場所で気持ち良さそうに寝入っていた。
 誰がかけたのか、ご丁寧にも腹の辺りには薄い上掛けが置いてある。
 いやこれを掛けるぐらいなら起こしてやれよ。
 親切心を起こした誰かに、内心で突っ込む。
 確かに今日の陽気ならば風邪を引くような事もないだろうが、しかし、それにしたって。
 何だろう、寝入った幼子に対する無償の愛情のようなものを感じる気がするのは、気のせいだろうか。

 溜め息と共に煙を吐き出し、カシムはアリババの傍に寄って行った。
 気配に気付かないのか、ここが危険な場所ではないと思っているからなのか、アリババが目を覚ます様子はない。
 少し考えて、カシムはその横に腰を下ろした。
 眠るアリババの顔は、起きている時よりもずっと、幼く見えた。
 こうして何をするでもなく隣りに居ると、まるで今日があのスラムで過ごした日々の延長線上にあるだけのようにすら思えてくる。
 当たり前のように互いが隣りにいて、ただ日々を生き抜いていた、あの頃と変わらない場所にいるかのような。

 あの時。
 王宮からの使者が来なければ。
 口止めされていたのだろう事をそれでも相談しに来たアリババを、引き止めていれば。
 何かが、変わっていたのだろうか。

 考えかけて、けれどどれもこれもが今更だと、思考を放棄する。
 どんな道筋を辿ったにせよ、今はこうして隣りにいるのだから、いられるのだから、それでいいじゃないか、と。
 アリババが、家族というものに飢えて憧れているのは知っている。
 霧の団の面々は、兄が弟にするようにアリババに声をかけ、子供たちは兄を慕うように憧憬の眼差しを向けている。
 王宮での、そしてここに再来するまでの道のりが、生活がどんなものだったのかは分からない。
 生活水準に至っては、きっとスラムよりかはずっとマシなものだったのだろう。
 だが、アリババは、この場所を、霧の団を切り捨てることは、最早出来なくなっている。

「お前、ちっとも変わらねえし」

 ぼやくように呟き、カシムはふっと苦笑した。
 隠しごとが下手で、お人好しで、優しくされればすぐそれに応えようとして。
 アリババの力を、その立場を利用しているのは自分なのに、何も言わずにこんな場所で安心した顔で眠る姿を見ると、憐れみともつかぬ気持ちが湧いてくるようだった。
 それでも、俺は。

「お前を手放す気は、ねえんだよ」

 一度目は、スラムから失い。アイツはもう死んだんだと言い聞かせて。
 二度目は、バルバッドから失い。裏切られたと知ったアイツはもうこの地へは戻らないだろうと思い。
 もう交わることはないだろうと思っていた道は、けれど何の因果か重なった。
 手放す覚悟を、二度も強いられたのに、結局はまたこうして隣りにいる。
 甦るのは、幼い日のこと。お前らを守ってやると、告げた言葉を、気持ちを。
 忘れていない。忘れられようはずもない。

「ここにいろよ、アリババ」

 お前が俺の隣りにいるのなら。
 俺が、何からだって守ってやるから。

 夢の中まで届くように。
 小さく囁けば、聞こえたのか否かアリババの口元に、微かに笑みが刻まれて。
 こんな穏やかな午後もたまにはいいか、と考えたカシムは知らない。
 その胸の内に宿った暖かさを、時として幸せとも呼ぶのだということを。

 寝息は途切れることなく、やがて葉巻を吸い終えたカシムは。
 けれどその場を動こうとはせず、ただアリババの眠りを守るかのように、隣りに座っていた。


END


ほのぼの、のような……?
あったかい話が書きたかったのに若干薄暗いのは、何故か……
アリババを起こさなかったのは、カシムの恋を応援し隊の仕業かと。

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